
賃貸管理でよくあるクレーム・トラブル6選
2020.06.25
不動産業界でもSNSでの情報発信が広まりつつありますが、知らず識らずのうちに「おとり広告」になっていませんか?
SNS上の不動産広告にも定められたルールがあり、違反した場合、指示処分や業務停止処分、免許取り消し処分などの制裁が科せられる可能性があるため、注意が必要です。
この記事では、SNS上での不動産広告が「おとり広告」にならないための注意点を解説します。
「おとり広告」とは、商品やサービスを安く見せかけたり、特典を装ったりするなどの手法で、消費者に興味を持たせて集客を増やすための広告手法の一つです。
しかし、商品やサービスが実際に提供されなかったり、提供された場合でも広告と異なる場合があり、消費者を欺く虚偽広告の一種として問題視されています。
不動産広告については、不動産公正取引協議会が公正競争規約や実施細則などで細かなルールを定め、不動産会社だけでなく広告会社、広告媒体社、インターネットサイト運営者にも遵守を求めています。
この規約には、不当な二重価格表示やおとり広告などの禁止事項が含まれており、「おとり広告」には、物件が存在しない場合や実際には取引できない場合、あるいは取引する意思がない場合の広告表示が含まれます。
このような「おとり物件」は、故意に掲載される場合もあれば、多数の物件を掲載していたために成約済物件の削除が追いつかず、意図せずおとり物件になってしまう場合もあります。
また、物件情報の入力は時間がかかり、膨大な項目を入力するため、不備が発生することもあります。
不動産業界においても、「おとり広告」が問題視されています。
SNS上の不動産広告も紙媒体と同じように、同じルールが課せられます。
特に、SNSの場合、掲載期間に限りがないため、物件を削除し忘れると「おとり広告」などの広告違反に問われる可能性があります。
たとえ意図的な違反でなくても、少しの表現や表記ミスが広告違反となってしまう場合があります。
不動産業務に従事しているプロであっても、不動産広告におけるルールを改めて確認することが重要です。
不動産広告は「宅地建物取引業法」と「不動産の表示に関する公正競争規約」という2つのルールに従う必要があります。
それぞれについて解説します。
宅地建物取引業法は、不動産業界において適正な業務運営を確保し、購入者などの利益を保護することを目的としている法律です。
この法律には、不動産広告に関する規制が含まれています。
具体的には、誇大広告の禁止、広告開始時期の制限、取引態様の明示などが規定されています。
【誇大広告の禁止】
建物の立地や広さ、写真や金額などについて、事実と異なる広告を表示することは禁止されています。
また、契約済みの物件を客寄せ目的で掲載し続ける「おとり広告」も禁止されています。
【広告開始時期の制限】
新築物件の広告開始時期が定められており、未完成物件の広告を出すことは違反となります。
建築確認や開発許可の申請が通る前に広告を出してしまうと、設計変更があったときに消費者の損害につながる恐れがあるためです。
【取引態様の明示】
自己取引・賃借の代理・媒介といった取引態様の明示が義務付けられています。
もし宅地建物取引業法に違反した場合、指示処分や業務停止処分、免許取り消し処分などの制裁が科せられる可能性があります。
不動産業界に携わる方は、不動産広告に関するルールを再度確認し、遵守することが重要です。
公正競争規約とは、各業界ごとに定めた自主ルールのことです。
もちろん、不動産業界にも独自の広告規制があり、取引金額が高額になることが多いため、各業界の中でも厳しいルールが定められています。
法律で定められていない自主規制ではありますが、違反すると罰則や罰金を受ける可能性もあり、しっかり把握してから広告を運用する必要があります。
具体的には、以下のようなルールがあります。
【徒歩〇分の表示】
「徒歩〇分」という表示は、その場所から最寄りの駅やバス停までの実測距離を基準にして算出する必要があります。
また、道路の状況や信号待ちなどの時間も考慮して、正確な時間を表示するように心がけましょう。
例えば、徒歩10分と表示されていたのに、実際には20分かかったということがあれば、虚偽の広告となります。
【文字サイズや色の制限】
不動産広告においては、原則として7ポイント以上の文字サイズで表示する必要があります。
また、見やすい色彩の文字により、分かりや すい表現で明瞭に表示しなければならないという決まりもあります。
【使用できない表現や用語】
広告に使用できない表現や用語もあります。
例えば、最高や完ぺき、絶対など、誤解を与えるような用語は使用できません。
また、極端な表現や誇大広告も禁止されています。
【おとり広告の禁止】
宅地建物取引業法でも説明しましたが、おとり広告は禁止されています。
存在しない物件や取引の対象となり得ない物件、取引する意思がない物件を掲載することは、消費者に不利益をもたらすだけでなく、業界全体の信頼を損なうことにもつながります。
不動産広告には、法律で定められた規制だけでなく、業界独自のルールもあります。
これらの規制を遵守して、ユーザーが正確な情報を得られるように心がけることが大切です。
意図的ではなくても「おとり広告」をしてしまうと指示処分や業務停止処分、免許取り消し処分になる可能性があります。
そうならないためには、不動産広告におけるルールを改めて確認することが重要です。
おとり広告にならないためには、物件の基本情報を正確に掲載することが大切です。
具体的には、物件の場所、広さ、間取り、築年数、価格などの基本情報を明確に記載する必要があります。
入力ミスによる表記のズレも違反となる可能性があるため、誤表記に気をつけましょう。
また、物件の特徴や魅力を過剰に強調することも避けるべきです。
必要以上に鮮やかな色を使ったり、大げさな表現を使ったりすると、おとり広告と誤解される可能性があります。
掲載時点での空き状況や販売価格が変更された場合には、速やかに修正することが求められます。
二重価格表示とは、実際に販売する価格に比較対照価格を併記する方法のことを指します。
広告表示が事実と異なる場合や競合他社よりも有利であるように誤認されるおそれがある場合には、そのような表示をしてはいけません。
これは、消費者に対して誤解や不信感を与え、信頼を損なう可能性があるためです。
例えば、実売価格が100万円の物件を比較対照価格120万円と表示し、割引価格であるという印象を与えることは不当な手段であり、おとり広告にあたります。
このような広告表示を避け、正確な情報を提供することが求められます。
ただし、不動産業者が過去の販売価格を比較対照価格として使用する二重価格表示は、一定の要件を満たす場合に限り許可されます。
具体的には、以下の要件をすべて満たす必要があります。
1. 過去の販売価格の公表日と値下げした日を明示すること。
2. 過去の販売価格は、値下げの直前の価格であり、値下げ前2か月以上にわたり公表していた価格であること。
3. 二重価格表示は、値下げから6か月以内に行われること。
4. 過去の販売価格の公表日から二重価格表示を実施する日まで物件の価値に同一性が認められること。
5. 二重価格表示は、土地(現況有姿分譲地を除く。)または建物(共有制リゾートクラブ会員権を除く。)について行われること。
不動産広告において、対象物件の画像を他の画像へ差し替えることはできません。
また、物件周辺の電柱や電線などの障害物を修正して見栄えを良くすることも禁止されています。
イメージ画像であることや、実際の物件と異なること、修正を行ったことを注記したとしても、ユーザーに実物より優れた印象を与える可能性があるため禁止されています。
基本的には物件画像は現地で撮影した本物のみを使用することが求められます。
不動産広告には、特定の用語を使用する際に制限があります。
例えば、「完全」「完璧」「絶対」といった用語は、過剰な期待や誤解を与える恐れがあるため、使用を制限されています。
そのため、正確な情報を提供するために、可能な限り具体的な表現を使い、過剰な表現は避けるようにしましょう。
また、「日本一」や「業界初」などの表記をする場合は、客観的な調査結果に基づく事実であることを表示する必要があります。
他にも、「厳選」や「特選」などといった広告表示は、明確な選別基準を示さずに使用することは禁止されています。
不動産広告に限らず、あいまいな基準で周囲の相場よりも安い価格やキレイな内外装などをアピールすることも避けるべきです。
さらに、「最高」「極上」といった最上級を表す表現も禁止されています。
特定のメーカーの最上級グレードなど、特定の条件を満たす場合は使用可能ですが、原則として避けるべき表現です。
お得感をアピールする、「特売」や「バーゲンセール」などの表現も多くの場合、違反となります。
ただし、安さの根拠を明示できる場合には使用可能ですが、注意が必要な表現と言えます。
SNSでの不動産広告は、「おとり広告」にならないよう十分な配慮が必要です。
正確で明確な情報を提供し、消費者を誤認させないように気を付けましょう。
また、法令や業界ルールを守り、責任ある広告活動に努めましょう。
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