賃貸管理でよくあるクレーム・トラブル6選
2020.06.25
賃貸営業で起きるトラブルの多くは、「言った/聞いてない」ではなく、用語の解釈違いから始まります。
たとえば「管理費」「共益費」「フリーレント」「定期借家」「原状回復」。
どれも“知っているつもり”になりやすい一方で、説明の粒度がバラつくとクレームやキャンセルに直結します。
この記事では、賃貸営業で頻出する基本用語を、単なる定義だけでなく、営業での使い方(言い換え)/注意点(揉めポイント)までセットで整理します。
新人教育の叩き台や、店舗・管理・契約の共通言語づくりの参考にしてください。

賃貸営業の用語は、単語帳のように「一覧で暗記」しても、いざ接客で出てきた瞬間に口から出てこなかったり、説明が薄くなって誤解を生みがちです。最短で戦力になる覚え方は、業務の時系列(募集→申込→契約→入居→退去)に沿って、用語を使う場面ごとに整理すること。
つまり、言葉そのものを覚えるのではなく、「この用語は、どの書類に載っていて、どのタイミングで、何を説明するために使うのか」までセットで紐づけます。
たとえば「敷金」は募集条件としてポータルやマイソクに載っていますが、顧客が本当に気にするのは「結局いくら戻るのか」「退去時に何が引かれるのか」です。
ここまで言語化できて初めて、用語が知識ではなく営業の武器になります。
同様に「定期借家」は契約形態の言葉ですが、現場で重要なのは「更新がない」「満了で終了」「再契約は別」という誤解の芽を先に潰す説明です。
こうした“誤解されやすいポイント”は、一覧暗記では拾えません。
賃貸営業で特に優先して覚えるべきは、説明を間違えるとトラブルになりやすい「説明責任が重い用語」です。大きく分けると、次の3つがあります。
1)金銭条件(敷金・礼金・更新料・保証料など)
2)契約条件(定期借家・普通借家、解約予告など)
3)退去条件(原状回復、特約、クリーニング費など)
この3つを先に固めると、接客の説明が一気に安定します。
逆に言えば、ここが曖昧なままだと、どれだけ物件提案が上手くても不安が残る営業になり、申込後に失速しがちです。
まずは、金銭条件→契約条件→退去条件の順で、用語を「定義」ではなく「説明の型(言い換え+注意点+根拠書類)」として覚えるのが、最短で成果に直結するルートです。

賃料/管理費/共益費
顧客が最初に見ているのは「家賃がいくらか」よりも、実は月額の合計です。
管理費と共益費は物件によって呼び方や内訳が異なることがありますが、営業として大切なのは「名称の違い」を説明するより、毎月いくらかかるかを一発で伝えること。
伝え方の型:「月額は合計◯円です(家賃◯円+管理費/共益費◯円)」
注意点:「管理費に何が含まれるか(水道・ネット等)」は物件次第なので、“込み/無料”表記があるときは条件確認が必須です。
敷金/礼金
敷金・礼金は、初期費用の中でも誤解が起きやすい代表格です。
敷金は“預り金”としての性格がある一方で、退去時に精算されるため「必ず戻る」と言い切るのは危険です。
礼金は基本的に返金されないため、ここを濁すと後々の不満につながります。
敷金:「退去時に精算がある」までセットで説明
礼金:「原則返金はない」を先に明確化
敷金ゼロ物件は、退去時費用が別建て(定額クリーニング等)になりやすいので、早めに退去条件へ橋渡しすると信頼が上がります。
更新料
更新料は地域・物件で差があり、さらに「更新事務手数料」が別途かかるケースもあります。
顧客の誤解ポイントは「更新時にいくら必要か」が見えていないことなので、更新料単体ではなく、更新時の支払総額で伝えるのが安全です。
伝え方の型: 「更新時に更新料◯円+(事務手数料があれば)◯円がかかります」
鍵交換費
鍵交換費は「必須か任意か」「いつ支払うか」で揉めやすい項目です。顧客は“防犯のため”と理解はしやすい一方、後出しになると不満になりがち。募集段階で一言添えるだけで事故が減ります。
確認すべき点:必須/任意、支払タイミング(契約時・入居前など)、交換対象(シリンダーのみ等)
町会費・自治会費
町会費・自治会費は金額自体は小さいことが多いですが、「聞いてない」になりやすい典型です。
月額なのか年額なのか、集金が管理会社経由か直接かで運用が分かれるため、支払い方法まで含めて説明できると丁寧です。
フリーレント
フリーレントは“お得”に見える分、条件の言い漏らしがトラブルになります。重要なのは「無料の期間」よりも、無料の対象範囲と縛りです。
確認すべき点: いつから無料か(契約開始月/翌月)、管理費等は対象か、短期解約違約金の有無、免除分の精算条件
入居可能日(即入居/相談)
「即入居」は“今日から住める”と誤解されがちですが、実際は審査・契約・鍵渡しの段取りで前後します。特に法人案件や引越し手配が絡む場合、入居可能日は意思決定のコアになるため、確定日と目安を分けて伝えるのがコツです。
専有面積/バルコニー面積
専有面積は室内として使える面積の基準で、バルコニー面積は別枠で表示されることが多いです。
顧客にとっては数値よりも「体感」が重要なので、面積の話は家具配置や生活導線に落として説明すると刺さります。
方位と採光
南向き=明るい、で終わらせると危険です。
周辺建物の影、階数、窓の大きさ、道路向きなどで体感は変わります。方位はあくまで目安として扱い、内見では「時間帯による明るさ」や「眺望・目隠し」まで一緒に確認する導線を作るとクレーム予防になります。
RC/SRC/S造/木造
構造は防音性や揺れの体感に影響するため、顧客が気にすることが多い項目です。
ただし「RCだから絶対静か」など断定は避け、一般論+内見での確認に落とすのが安全です。
オートロック/宅配ボックス
オートロックは安心材料として強い一方、運用(来客の呼び出し方式、共用部の開錠方法)で使い勝手が変わります。
宅配ボックスも「ある=便利」ですが、個数不足やサイズ制限がある場合があります。
設備は“有無”だけでなく、使い方と制約まで一言添えると丁寧です。
インターネット無料(条件の落とし穴)
「ネット無料」は強い訴求ですが、誤解も生みやすいワードです。
無料でも、回線方式・速度・同時利用の混雑、ルーター準備、個別契約の要否などで満足度が大きく変わります。
確認すべき点:回線方式(例:集合回線)、速度目安、工事不要か、Wi-Fiは出るか、解約時の扱い

入居申込書/申込(先行申込)
入居申込書は「入居したい」という意思表示を正式に行い、審査を進めるための書類です。
先行申込は、内見前でも申込を受け付ける運用で、人気物件や募集開始直後に起きがちです。
ここで最も大切なのは、「申込=確保」ではないことを最初に明確にすること。顧客は申込を入れた時点で“決まった”と感じやすいので、誤解が残ると後で揉めます。
申込金(預り金)の扱い
申込金(預り金)は運用差が大きく、説明を誤ると炎上しやすい領域です。
顧客側は「払った=契約が成立した」と受け取りやすい一方、実態は「審査に進めるため」「一定期間の意思確認」など、目的が物件・管理会社によって異なります。
事故を防ぐには、必ず次の3点をセットで説明します。
何の目的で預かるのか(審査手続きのため/申込意思の確認 等)
返金条件は何か(審査落ち/顧客都合キャンセル/期限 等)
返金方法・タイミング(いつ/どうやって返すか)
とりあえず入れておけば大丈夫は禁句。金額の大小ではなく、後出し感が不満を生むので、先に丁寧に言い切るほど信頼が上がります。
仮押さえ
仮押さえは現場で便利な言葉ですが、定義が曖昧で、顧客にとっては“部屋が確保できた”と誤認しやすい表現です。
結果として、他物件を止めた後に審査落ち・条件変更が起きると、クレームに直結します。
置き換え推奨: 「申込を入れて審査に進める」 「審査中は募集状況が変わる可能性がある」 のように、具体的な状態で説明するのが安全です。
入居審査(保証会社審査/管理会社審査/オーナー審査)
入居審査は、物件によって「誰が最終判断するか」が異なります。代表的には以下の3パターンです。
保証会社審査:保証会社が家賃保証の可否を判断
管理会社審査:申込内容・条件・運用面の確認
オーナー審査:貸主が最終判断(管理会社を介して判断する場合も)
顧客の不安は「落ちるかも」「いつ分かるか」に集中するので、審査の仕組みは難しく説明するより、安心できる形で整理します。
連帯保証人/緊急連絡先
この2つは混同されやすいので、「責任の重さ」で切り分けると伝わります。
連帯保証人:借主と同等の支払い義務を負う
緊急連絡先:連絡のための連絡先(原則、支払い義務は負わない)
伝え方: 「保証人は支払い義務が発生します。緊急連絡先は連絡用で義務はありません」
法人の場合は「保証人を立てられない」ケースがあるため、保証会社利用や追加書類へ自然に繋げられるとスムーズです。
保証会社(保証料/更新保証料)
保証会社は、家賃滞納時の立替等を行う仕組みで、利用が必須条件になっている物件も多いです。ここで揉めやすいのは、保証料が「いくら」「いつ」「更新でまた払うか」が見えないこと。
保証料:初回にかかる費用(初回保証料)
更新保証料:一定期間ごと(例:年更新)に発生する費用
見積もりには必ず組み込み、初期費用の段階で“先出し”するのが鉄則です。
必要書類(身分証、収入証明など)
申込・審査は、用語知識よりも書類回収の精度が成果を左右します。必要書類は物件や審査機関で変わるため、顧客を迷わせない案内が重要です。
・身分証(本人確認)
・収入証明(支払い面の確認:源泉徴収票・給与明細・確定申告書など)
・在籍確認に必要な情報(勤務先情報など)
・法人契約なら:登記簿謄本、会社概要、契約担当者情報 など
コツは「とりあえず出してください」ではなく、なぜ必要かを一言添えること。
心理的ハードルが下がり、回収が早くなります。

賃貸借契約
賃貸借契約は、貸主(賃貸人)と借主(賃借人)の間で、賃料や使用方法、禁止事項、解約条件などを取り決める契約です。
営業として重要なのは、契約書を“読む”だけでなく、顧客が判断すべきポイント(いつまで住める/どう解約できる/費用は何が発生する)を短く整理して伝えることです。
普通借家契約/定期借家契約
ここは最優先で標準化すべき用語です。
普通借家契約:更新が前提になりやすい一般的な契約形態
定期借家契約:期間満了で終了し、原則「更新がない」
自動更新/合意更新
更新の仕組みは物件・契約で運用差があり、顧客は「更新って何をすればいいの?」で止まりがちです。
自動更新:一定の手続きをしなくても更新される(ただし費用や通知は発生することが多い)
合意更新:更新時に双方の合意・手続きが必要
説明では「更新の方式」より、更新のタイミング/必要手続き/更新時費用を先に示すと理解が早いです。
初期費用
初期費用は「項目が多い」こと自体が不安を生みます。
顧客は内訳より先に総額を知りたがるので、見せ方を固定するとトラブルが減ります。
仲介手数料
仲介手数料は、上限や課税の扱いを含め、説明がブレると不信感につながる項目です。
現場では「何に対する費用か(仲介業務の報酬)」を短く添えるだけでも納得感が上がります。
火災保険(家財保険)
多くのケースで入居者に加入が求められるのが火災保険(家財保険)です。
顧客は「火災だけ?」と思いがちなので、一般的には水濡れ・破損などを含む商品もある点を触れつつ、最終的には「加入が条件」であることを明確にします。
短期解約違約金
短期解約違約金は、フリーレントやキャンペーンとセットで付くことが多く、説明漏れがあると炎上しやすい用語です。顧客が知りたいのは「いつまでに解約すると、いくらかかるか」。
期間と金額を“具体”で提示します。
解約予告(1か月前等)
解約予告は、二重家賃や引越しスケジュールに直結するため、契約時に必ず強調したい項目です。
「解約通知をいつまでに出す必要があるか」「通知方法(書面・フォーム)」まで含めて案内できると、入居後の問い合わせも減ります。
特約
特約は揉めポイントの宝庫です。
クリーニング費定額、禁煙、短期解約違約金、設備の扱いなど、特約は“個別条件”として契約の実態を決めます。
営業としては「特約があるかないか」ではなく、どの特約が費用や責任範囲に影響するかを優先して説明できると強いです。
付帯設備表
付帯設備表は、「設備がある/ない」だけでなく、誰の負担で修理・交換するかに関わります。
特に注意が必要なのが、エアコン等の残置物。残置物だと故障時の扱いが変わるため、口頭説明で済ませず、付帯設備表で区分を確定させる運用が重要です。
退去時精算書
退去時精算書は会社により呼称が揺れますが、要は「退去時の費用精算の根拠となる書面」。
契約時点で「退去時に精算がある」「特約や原状回復の考え方で金額が変わる」ことを一言添えるだけで、退去時トラブルが減ります。

更新案内
更新案内は、更新時期が近づいたタイミングで届く通知です。
顧客は「何をすればいいか」「いつまでに手続きするか」で迷うため、案内を受け取った時点での動き(署名返送・支払い・期限)を短く言えると問い合わせが減ります。
更新料
更新料は「更新の対価として発生する費用」です。
ここで重要なのは、更新料単体ではなく、次の更新事務手数料なども含めた更新時の支払総額で伝えることです。
解約通知
解約通知は、解約の意思表示を行う手続きです。
揉めやすいのは「電話で言ったつもり」「いつから起算?」などの行き違い。
通知方法(書面・フォーム・メール可否)と、起算日(受領日など)をセットで案内できると事故が減ります。
解約日/明渡日
顧客が混同しやすいのが、解約日と明渡日です。
解約日(賃料が発生する最終日)
明渡日(部屋を空にして鍵を返す日)
として整理すると理解されやすく、「引越し日=解約日」という誤解を防げます。
違約金
違約金は短期解約違約金を含め、解約に伴って発生する費用です。
ポイントは「いつまでに解約すると、いくらかかるか」を具体に示すこと。曖昧にすると不信感が出ます。
原状回復
原状回復は「入居時の状態に完全に戻す」ではなく、一般に借主が負担すべき範囲を回復するという考え方で運用されます。
この前提を伝えるだけで、顧客の誤解がかなり減ります。
通常損耗/経年劣化
通常損耗:普通に生活していて発生する汚れ・傷み
経年劣化:時間経過により自然に起きる劣化
この2つは借主負担にならない(または限定的)という理解が基本になりやすく、ここを押さえると説明が通ります。
一方で、故意・過失(乱暴な使用、手入れ不足によるカビ等)による損耗は借主負担になりやすい傾向があります。営業としては断定しすぎず、「使い方・原因・特約で判断が変わる」と添えるのが安全です。
ハウスクリーニング費
クリーニング費は「退去時に実費」「定額特約」「入居時に前払い」など運用が分かれます。揉める原因は、金額よりも“聞いていない感”。
募集〜契約の段階で、発生タイミングと定額かどうかを先に言っておくと強いです。
クロス張替え
クロス張替えは「全部借主負担」と誤解されやすいですが、原因(汚れ・破損の程度)や経年、特約で扱いが変わります。説明では“全面”という言葉を避け、範囲と原因で判断することを伝えると揉めにくいです。
鍵交換
退去時の鍵交換が発生するケースもありますが、入居時交換との混同が起きやすいので、「入居時/退去時どちらで、誰負担か」を書面ベースで整理しておくと安全です。
賃貸営業の用語は、単語として覚えるよりも「いつ・どの場面で・何のために使うか」を軸に整理したほうが、圧倒的に早く身につきます。だからこそ、暗記の起点は一覧ではなく、募集→申込→契約→入居→退去という業務の時系列です。
用語をこの流れに当てはめていくと、「この言葉は募集図面で出る」「これは申込書類で必要」「ここは重説で必ず説明」「退去で揉める」など、現場の動きと一緒に思い出せるようになり、説明の抜け漏れや言い間違いが減っていきます。
用語を覚える目的は“知っていること”ではなく、“同じ説明を、誰がやっても同じ品質でできること”です。
募集・申込・契約・入居・退去の各フェーズで、言い換えと注意点を型として揃えれば、接客は迷いがなくなり、顧客の不安も減り、結果として成約率と満足度が安定します。
用語は暗記ではなく、業務フローに紐づいた「説明の武器」として整備する——これが、賃貸営業で最短で強くなる方法です。
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